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心不全早期発見と再入院予防のための取り組み(循環器内科による監修)

近年、本邦においては、生活習慣の欧米化による心筋梗塞などの虚血性心疾患の増加、高齢化による高血圧、弁膜症、不整脈の増加などにより、心不全患者数がどんどん増加しています。さらに心不全は高齢になればなるほど発症率が高くなることが知られています。高齢化が進むわが国では、今後数十年の間、高齢心不全患者数が増加の一途をたどることが予想されており、この現象は心不全パンデミックと呼ばれています。(図1)

心不全は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病から、心臓の機能異常を来し発症します。心不全を発症すると、入退院を繰り返し、患者さんの身体機能の低下、生活の質(QOL)の低下を招き、生命を脅かす予後不良の病気です。(図2)

したがって、心不全の予防として、① 生活習慣病にならない予防、② 生活習慣病をしっかりコントロールし、心臓に機能異常を起こさない予防、③
心臓の機能異常から心不全を発症しない予防、④ 心不全を悪化させない・繰り返さない
予防、以上の4つの予防が重要となります。このうち①②の予防においては、生活習慣の改善と生活習慣病の適切なコントロール、③の心不全発症予防においては、まずは心臓に異常がないかを早期に発見することが極めて重要です。現在、各国のガイドラインにおいて、心不全の診断、重症度評価、および予後予測のバイオマーカーとしてBNP、NT-proBNPの測定が推奨されています。本邦でも、心不全の早期診断、循環器専門医への紹介の目安として、2023年に日本心不全学会から「血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版」(図3)が発表されました。



また、④の心不全を悪化させない・繰り返さない予防のためには、適切な生活管理(運動や食事療法)と薬物治療の継続が必要とされます。しかしながら、高齢者心不全患者さんでは、サルコペニアやフレイルといった身体機能の低下や認知機能の低下などの問題もあり、また独居のため自分自身で生活管理が困難なことも多くなってきています。そのため高齢心不全患者さんの心不全の悪化・再燃予防のためには、病院や地域のかかりつけ医による医療だけでなく、介護・福祉サービスなどの包括的なサポートが必要となります(図4)。したがって、病院の循環器専門医、地域のかかりつけ医、および地域包括支援センターでの患者さんに関する詳細な情報共有とサポート、つまり地域ぐるみで心不全患者さんをサポートする地域連携と地域包括ケア体制の構築が重要と考えられます。